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傷害速報

 日本小児科学会雑誌8月号の傷害速報はコロナ禍を反映しているなと思われるものが2/3を占めました。一つは「新型コロナウイルス抗原検査キット抽出液の誤飲」、もう一つは「消毒剤誤飲によるエタノール中毒」というものでした。抗原検査キットの多くに含まれるアジ化ナトリウムが問題になるようです。自宅での検査が増えそうな昨今、注意が必要ですね。*検査キットで唾液で調べるというやつがありますが、信頼性に欠けます。抗原検査はインフルエンザ同様鼻腔ぬぐい液での検査が基本になります。外来でも唾液検査で陰性でしたと言われる方が多いですが、検査キットを薬局で買う際は研究用ではなくて、医療用を購入するようにしてください。また、家庭でもアルコール消毒は普通になっていると思いますが、濃度がウイスキーの2倍くらいあります。小児ではエタノール0.5ml/kgで重篤な中毒症状が出現するとのことです。報告されたケースでは1プッシュ約3ml、20kgの子どもで、4プッシュで重篤な中毒症状が出ることになります。子供の顔にかからないような注意も必要です。⭐︎アルコール濃度が高いので引火も問題になっています。

ネオジム磁石のおもちゃに注意

 日本小児救急医学会雑誌の18巻3号に「複数のネオジム磁石を誤飲し、胃空腸穿通を来した1例」という症例を北里大学病院小児外科の追木宏宣先生らが報告されました。ネオジム磁石は強力な磁力があり、以下論文からの引用「磁石を複数個誤飲した場合、体内で磁石同士が消化管壁を挟むように吸着することで、潰瘍形成や穿通・穿孔、腸閉塞を引き起こす危険性がある」ということで、この報告例も外科手術を要しています。国外では死亡例も報告されているようです。本例でもクリスマスプレゼントとして購入されたようで、小さいお子さんがいらっしゃる家庭では特に注意が必要なようです。

子どもの誤飲

子どもの誤飲の原因としては、3年連続でたばこが最多だったことが厚生労働省が実施した2016年度の子どもの誤飲調査で判明しました。たばこを誤飲した年齢は、1歳半までの子どもが大半(8割以上)を占めていたようです。乳幼児がいるご家庭では、たばこを家庭内に持ち込まないこと、できればこのニュースをきっかけにたばこを止めてもらえるととても嬉しいのですが・・・。また、日本小児科学会のInjury Alert (傷害速報)には、8ヶ月の乳児がプラスチックのサイコロを誤嚥して窒息した事例が報告されています。乳幼児は何でも口にしてしまう事実を再認識して、防げる事故は防ぐようにしたいものです。
 *誤飲(異物を誤って飲み込んでしまう)と誤嚥(異物が気管につまる)

ボタン電池誤飲に注意

東京慈恵医大と「電池工業界」による実態調査で、2011年〜15年の5年間で1,000件近くに上るということが判明しました。ボタン電池は食道や胃に穴を開け重篤な症状を来すこともあります。保管場所に留意して子どもの目の届かないようにすることが一番ですが、もし飲み込んだかどうかわからないときは受診して下さいね。時間が経つとそれだけ大変になりますので。
*12月24日(日)は休日在宅医です。午前9時〜12時。午後2時〜午後5時まで。予約は出来ません。また、事前の電話は不要です。

薬の誤飲

 日本小児科学会誌4月号に傷害速報No.67が掲載されました。お母さんに処方された薬(筋緊張性疾患治療薬)を誤飲して、意識障害、けいれんで入院加療となった2歳9ヶ月の女児例が報告されています。29錠分を誤飲した可能性が有り、一時気管内挿管して人工呼吸を要するほどの重症だったようです。気管に詰める誤嚥では、窒息の可能性もあります。過去の傷害速報は、小児科学会のHPでもみることが出来ますが、宮崎県小児科医会のHPの救急案内の下の方に直接リンクを張っていますので、御利用ください。そして、少しでも事故がおこらないように努力をして下さいね。